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南国と死闘

年をとると肉食から菜食に変わっていくのは、人も亀も同じ。齢11才のカメは最近、果物を好んで食う。

先日、熟しすぎてドロったバナナをカメに与えた。バナナの欠片を箸でつまんで給餌すると、カメは後ずさりし、亀頭を甲羅に収めながら吠えた。シャーッ、シャーッ。長年カメを見ているのでわかる。カメは驚いているわけでも、怒っているわけでもない。カメは興奮しすぎておかしくなっていた。熟れたバナナは、鈍感な人間の鼻ですら、むさ苦しいほどに芳醇な香りを放つ。眼前に差し出されたドロったバナナの香りにカメは怯え、吠えた。
怖いか。これが熟れたバナナだ。発音に留意するとバヌーヌ。熟れバヌーヌ!
カメは怯えながらも、果敢に熟れバヌーヌに噛みついた。フシャーッ、フシャーッ。カメよ、それは箸だ。バナナはおまえの足元だ。飼い主の助言を無視してカメは箸と死闘を続ける。箸を噛み殺さんと荒々しく亀頭をスイングさせるカメ。踏んづけられてるバナナ。カメに箸を取られてすることがない飼い主。

箸に付着したバナナ味が薄れてきたのだろう。カメは咥えていた箸を捨て、俺の顔を見たあと、足元のバナナを食べた。箸の先端に残ったカメの噛み跡は深く、死闘の激しさとバナナの美味しさを物語るのであった。
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by disgust | 2011-10-26 14:57 | 亀甲談 | Comments(0)