カテゴリ:映画とか本とか( 62 )

逆光

NHKで火野正平が自転車旅をしていて、たまに見る。
どっか最果ての灯台に行く回がとてもよかった。難儀して灯台に着いたのは日暮れ時。撮影隊は照明を持っていないので、画面は空のぼんやりした明るさと、灯台と火野正平のシルエットだけ。せっかくの表情が撮れていないのだから、撮影ミスみたいなものだが、画面の情報量の少なさが逆に旅情を豊かに表現していたように思う。

8ミリフィルムで映画を撮る人はもういないだろうが、あれなんか全編光量不足だったりして、アレはアレでなかなかでしたよ。

是枝裕和の映画では、逆光が特にいいね。プロの機材とスタッフを抱えながら、アマチュア映画のような生々しさを維持しているなんて、ゴイスーだね。生々しずぎて、痛々しすぎて見れなかったりするけど。

肝心なところを逆光で見せなかったり、中途半端な台詞で濁したり、ありえないタイミングで終幕したり。
卑怯っていえば卑怯なやり方だけど、俺は大好き。
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by disgust | 2011-08-19 16:07 | 映画とか本とか

キャー要さーん

文句言いつつ、龍馬伝。今日はおもしろかった。

「東洋を斬れ」と発狂する半平太と、「龍馬を殺せ」と叫ぶ後藤象二郎のカットバックは、醜く歪んだおっさんの顔だけで構成されており、テンション高くてナイス。時勢が沸騰していく感じが出てますな。

しかし武市半平太は悲劇の人よの。岩崎弥太郎伝なら笑って見ていられるが、半平太伝は悲しすぎて見られないなあ。
要潤はいい。どことなくいい。とりあえず今はキャー要さーんと毎週日曜に小さくつぶやくに留めるが、ファンレターを書くのもやぶさかでない。
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by disgust | 2010-03-21 21:31 | 映画とか本とか

なんでそんなにさりげないのか

大河ドラマの龍馬伝をガマンして見ている。
見たくて見てるんだが。15分くらい見てるとムカムカしてきて、なんとか最後まで見てる。
コスプレしたイケメンが寄り集まって号泣する様子を奇抜なカメラワークでとらえた天地人よりは、龍馬伝は遥かにいい。土佐藩の差別構造から話を始めるあたり、期待がもてるじゃないか。
歴史の表舞台に龍馬がたつまでは話題がショボく、ドラマが盛り上がらない。そこでシナリオのおもしろさが重要になると思うのだが、シナリオはよい。差別構造から始まったドラマの方向性がしっかりしていて、ブレがない。

でもおもしろくない。原因は、問題は福山雅治がコメディリリーフができない点にある。脇役の香川照之、渡辺いっけい、谷原章介がやっている模範例を見ればわかる。龍馬伝のシナリオには笑いの要素が含まれている。前回放送の千葉さなの求愛に龍馬が戸惑うシーンは、ムカムカの絶頂だった。ことごとく福山雅治がさりげないのである。もっとオタオタと!慌てふためいてケツをぷりぷりと!まぬけた声でバカっぽく!もう要潤に代われ!と、クダを巻く日曜の夜。おっさんの時代劇鑑賞かくあるべき。
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by disgust | 2010-03-04 04:10 | 映画とか本とか

水戸芸術館にて

ヨーゼフ・ボイスというドイツの現代美術の人の回顧展を見た。
現代美術をニヤニヤしながら見るのは、なかなか有意義である。フェルトでできたスーツは「フェルトのスーツ」というタイトルだった。思わず頬が緩む。
美術史的に名高いレディ・メイドの本物を初めて見た。ただのサイン入りシャベルだが、立派な芸術品である。ボイスは東ドイツで買った日用品数百点にサインしまくって、芸術を量産したらしい。
ボイスが死んで24年経った今は、それほどの価値もなさそうであるが、やはり本物を見るとなかなかのインパクトだった。「なんだろうねあれは」と鑑賞後に考えたり、誰かと語らいたくなる力を放っている。なんも考えないで作ったとしか思えないガラクタや、勢いで乗り切ったようなパフォーマンスもあったが。
芸術家というより、騒動屋って感じがするなあ。
納豆買って帰った。
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by disgust | 2010-01-15 23:55 | 映画とか本とか

NHKのドラマの坂の上の雲の感想

NHKのドラマ「坂の上の雲」。第4回まで見た。
いろいろ惜しい。

芝居が大げさで臭い。香川照之はもっと抑えた芝居のできる人なのに。「明治人の明るさ」を飛び跳ねて表現するのはどうか。病魔に蝕まれてからの子規が本領なのかもしれない。
モッくんもいまいちだが、役の年齢と20歳も離れているため無理もない。後半に期待。
重要な役どころに、渡哲也と高橋英樹という名ばかりの大根役者を配した点は、NHKらしいつまらなさが出ている。

登場人物が増え、物語のスケールが大きくなっていくにつれ、時間に収まらないドラマが雑になるのは、NHK大河の恒例。
第4回の伊藤博文がらみのシーンが、もう雑だった。明治の重鎮たちがテンポよく登場し、国際情勢を明快に語り、立ち話で国家戦略を練り、日清戦争が始まって終わった。いっそ渡辺謙のナレーションで片付けてしまってもいいんじゃないだろうか。

テレビドラマの域を超えたスケールのでかさ。菅野美穂の芝居。乃木希典役が柄本明。以上の三点がとてもいい。しかし渡哲也の大根芝居が、すべてを台無しにしている。なんだあの鹿児島弁。
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by disgust | 2009-12-23 00:42 | 映画とか本とか

テレビドラマを見る日々

フジテレビの「不毛地帯」が期待はずれだった。
映像はいい。渋めで、シンメトリな構図でズバーンとか、後頭部のアップで静止させたりとか、俺はそんなの好き。ただシナリオがひどい。主人公の戦争に対する感情を説明するためだけに登場して、三分後に自殺する奴がいたが、あんなのギャグだ。ギャグといえば袴田君のティアドロップと、エンディングテーマのトム・ウェイツが唐突すぎて笑った。来週は見ないなあ。

NHK教育の「新・三銃士」は意外なヒット。
人形の細やかな演技には驚く。むかしの人形劇に比べ、カメラワークが多彩なので、スケールがでかく感じる。剣劇もそれなりにアクション映画ぽくてびっくり。
子供向けなので、説明過多なナレーションが余計ではある。しかし今後は子供の感受性を信じて、もっと映像で物語ってみてもいいんじゃないだろうか。見づらい時間の放送だが、注目だ。

あとは年末のNHK大河特別枠「坂の上の雲」、来年の大河ドラマ「龍馬伝」を期待している。
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by disgust | 2009-10-16 22:08 | 映画とか本とか

石井隆

むかし好きだった映画を見直してみたら、意外につまらなかったというのはよくある。自分の感性が磨耗したとは思いたくないので、その映画の賞味期限が短かったのだと思うようにしている。

石井隆の「GONIN」。
高校生のころ石井隆にハマって、ビデオで何回も見た。GONINは映画館で見て、ラストの襲撃シーンで興奮しすぎて、心臓がちょっと痛くなった。ほとんどセリフを覚えちゃうくらい大好きだった。見直してつまらなくなってたらイヤだな、と10年以上避けていたが、意を決して再鑑賞。

いやー。今見ても素ん晴らしい。不朽の名作や。最高や。
ネオン管の光、水たまり、ちあきなおみの悲しい歌。石井隆の描くヤクザは滑稽で、哀しい。それゆえに追い詰められたときに、怖い。GONINは登場人物のほとんどが追い詰められるので、後半のボルテージの高さたるやハンパではない。
ストップモーション、ズーム、インサートカット、長回しの多用。ちょっと無茶な演出なんだが、こういう監督のエゴを押し通した映画にだけ現れる、闇雲な疾走感。映画の審美眼がムダに肥えてしまった今の私にさえ届く。死んでいく男の横顔を、こんなにも美しく撮る映画監督が他にいるか?
近年の石井隆は、淫乱女のエロスに集中しているようだが、いまいちどガッツリと男の戦いを描いてほしい。
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by disgust | 2009-09-15 22:27 | 映画とか本とか

グッド・バッド・ウィアード

韓国製西部劇「グッド・バッド・ウィアード」を見た。

荒々しくて洗練されてない感じがナイス。綿密にマーケティングしながら作られるハリウッド映画ではあり得ない、作り手の気分で作ってるようなワガママな感じがよい。

お宝を持ってバイクで荒野を逃げるウィアード。追いかける馬賊。出番が来るたびに人を殺すバッドが、手下を引き連れてレースに参戦。後方から、皆殺し指令を受けた日本軍が爆撃とともに登場。爆煙と砂塵のなかを単騎駆けるグッドが、手当たりしだいに誰かを撃ち殺す。それぞれの事情で、五つの勢力が殺し合いながら一直線に荒野を走り続ける。そのバカバカしさ。
近頃めずらしい、突き抜けた映画であった。
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by disgust | 2009-09-04 21:29 | 映画とか本とか

栃と餅

栃と餅 食の民俗構造をさぐる

はったい粉というのは、麦の粉を炒ったものだ。砂糖と練り合わせてぺちょぺちょなめたりする。長らく「はったい」の意味がわからなかったが、本書によると、「はたき」が変化した言葉らしい。
作業場にむしろを敷いて、石臼で麦粉を作る。作業後にむしろにこぼれた粉を、はたいて集める。ここからはたき粉とよばれるようになったらしい。
と、この話を読んでからというもの、飯粒を食い残せなくなった。外食時であっても、皿に残った飯粒やもやしの欠片をかき集める俺を、どうか哀れまないでほしい。金は持ってるし、食い足りないわけではないんだ。この本が悪いんだ。
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by disgust | 2009-08-02 09:56 | 映画とか本とか

チェ 28歳の革命

「チェ 28歳の革命」を見た。

真摯にチェ・ゲバラを描こうとした熱意がよく伝わる。劇中のゲバラは敵を憎悪して叫ぶでもなく、戦いに勝利して泣くわけでもない。事実そうであったように、静かに穏やかに、そして頑固にまっすぐ戦った。誇張や嘘が全然ない。音楽で盛り上げるとか、観客の感情に訴えるような芝居もない。娯楽性はゼロだ。
チェ・ゲバラの実像に迫るという目的は果たされているだろう。もうちょっと演出してもよかったと思うが、アクション映画になってたらゲンナリだ。これでいい。

監督と俳優の自己満足映画といえるが、ここまで私心ない自己満足はめずらしい。


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追記
後編の「チェ 39歳の手紙」を見た。

「私は神を信じないが、人間を信じている。」という台詞が象徴的。
ボリビア人に理解を示し、妥協し、譲歩する。たとえば部下の略奪に目をつぶるとか、景気のいい嘘をつくとか。ただ現状に不満があるという理由だけで、革命に参加する民衆が多いのだから、そういう人心操作があって普通だと思うのだけど。しなかったんだねえ。
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by disgust | 2009-01-17 02:50 | 映画とか本とか