2004年 12月 14日
墓はなし
先日、店の前を通ると「閉店セール」と力ない張り紙がしてあった。葬儀に赴く気分で立ち寄ってみると、まさに閉店しながらセールしていた。書棚はほとんど空っぽで、ダンボールが山積み。ダンボールに入れられた本はこれからまた別の古本屋へ旅していくのだろう。床やワゴンに置き去りにされている山積みの本は、きっと捨てられるのだろう。頭にタオルを巻いて掃除していた店のおやじは、投げやりな態度で接客してくれた。「もうなんもないよー」と自虐的な笑み。店内は私とおやじの二人きり。引き返せない空気。なにか買わねば。私は血眼になって捨てられる本たちを漁った。「勝手にもってっていいよー」そんなこと言うなよおやじ。しかしほんとになにもない。秋元康とハーレクインロマンスばっかりだ。しかし文庫本のワゴンにボロボロの「坂の上の雲」や「野生の証明」を見つけた。よっしゃ、俺がお前らを救ってやる。ロクに中身もあらためずに手当たり次第に拾っていった。すると、おやじがビニール袋を持ってきた。「これに入るだけ入れて100円」そんなんだから店がつぶれるんだよ。時代小説中心に適当に7冊くらい袋に入れた。香典のつもりでおやじに200円を渡すと、親父は「悪いねー」と言った。私はなんだか火事場泥棒の気分。
今日通ったら、コーヒーの生豆を売る店になっていた。
by disgust
| 2004-12-14 21:13
| 映画とか本とか
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