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ライダー入城

城。
城はいい。
美しさと堅牢さという、相容れぬ要素を融和させた建築美。
私は旅行先に城があれば、とりあえず見に行く。殿様の気分で天守閣からの眺めを楽しむのもいいが、私は足軽視点で見るのが好きだ。塀を乗り越え「一番槍ーっ!」と叫ぶ自分をイメージしてみたり、濠に落っこちて屍になり、お味方のために橋になる自分をイメージしたり。趣が乗って石垣をよじ登って、警備員に睨まれたり。楽しい。ちなみに石垣登りを江戸城(皇居)でやると、シャレにならないのでやめたほうがいいぞ。

以前、熊本城を官軍兵の気分で観光していた折、ひとりのライダーが目に留まった。かっちょええバイクで熊本城に乗りつけ、駐車場の柵にチェーンを掛けていた。バイク旅はかっこいいが、なかなか大変そうだ。荷物をいちいち持ちあるかにゃならんし、メットにツナギにグローブに、装備品も多い。難儀やね。電車旅だった私は身軽だった。

熊本城の内部は資料館になっており、西南戦争の絵巻物や、戦国時代の鎧具足が展示されている。南蛮鎧はええなあ。と見惚れていると、階下からボッシュボッシュと不穏な足音。先ほどのライダーであった。皮のツナギを上半身だけ脱いで、フルフェイスのメットを小脇に抱えて、いかついブーツを踏み鳴らして階段を上がってきた。足軽気分で観光していた私は急遽、殿様気分に切り替えて、ライダーに「む。大儀であった!」と呟いた。そして熊本城の門前でバイクをアイドリングさせながら「開門!かいもーん!」と叫ぶ彼の姿を想像し、ほくそえんだ。
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by disgust | 2005-04-13 02:43 | 雑記 | Comments(0)